ID-POSデータを活用して「UHA味覚糖 コロロ」の勝機を分析:後編~『Designers Eye』が可能にした複眼的視点~

前回に引き続き、今回もTrue Dataの購買データ分析と、CREMUのSNS解析及びクリエイティブデザインのノウハウを組み合わせたサービス 『Designers Eye(デザイナーズ アイ)』を用いて、「UHA味覚糖 コロロ」の勝機を分析して参ります。今回はSNSデータとブランドコミュニケーション、そしてデザインに関する評価から、「UHA味覚糖 コロロ」の成功要因を深堀します。

購入者の「UHA味覚糖 コロロ」への認知イメージ

『Designers Eye』ではSNSデータから特定商品に関する発言を解析することで、顧客の商品に対する認知イメージや利用シーンを調べることが出来ます。 今回は「UHA味覚糖 コロロ」に対する顧客の声を調べるべく、2017年1月~10月までの間でコロロに対するSNS上での発言を見てみました。

その結果が、下のグラフとなります。ここでは、ポジティブまたはネガティブと捉えられる内容の発言をそれぞれカウントしています。

ポジティブまたはネガティブと捉えられる内容の発言

出典:SNSデータより集計 (CREMU DESIGN社)より

この結果から明らかになった傾向は、7月~9月にかけてコロロに関するポジティブな発言(ツイート)が増えたこと、それによって緑色の縦棒が示すポジティブな発言の割合が上がったことです。このころから、「新感覚グミ」というコロロのコンセプトにも認知が広がってきたと言えます。

 

では、コロロの味や食感については、顧客からどのように評価されているのでしょうか。

コロロの味や食感への評価

出典:SNSデータより集計 (CREMU DESIGN社)より

左の横棒グラフは、コロロの各味に対する顧客の評価、そしてコロロ全体の食感に対する評価をポジティブかネガティブかに分類して集計したものになります。味については、多少のバラつきはあるものの、各味ともにポジティブな声が過半数を占めています。 一方、食感についてはネガティブな声が全体の約2/3を占め、「味はいいけど食感はイマイチ」というのが、コロロに対する顧客たちの認識と言えそうです。

 

また、SNSデータを通じて、顧客がどんな時間帯にコロロを食べているかを調べることもできます。折れ線グラフは、コロロに対するSNS上での発言が行われた時間帯を分類したグラフになります。

コロロに対するSNS上での発言が行われた時間帯を分類したグラフ

出典:SNSデータより集計 (CREMU DESIGN社)より

このグラフを見ると、コロロに関する発言が多いのは15時~16時といったおやつの時間ではなく、20時以降であることがわかります。この結果は、おやつとしてオフィスや家で食べている顧客だけでなく、1日の終わりに家でリラックスしながらコロロを食べる顧客が多数存在することを示唆しています。

『Designers Eye』では、現行のパッケージデザインとブランドコミュニケーションの一貫性にも着目しております。 この両者から提供されるメッセージに食い違いが生じると、消費者に対する訴求力が弱まり、収益に影響を及ぼす恐れがあるからです。

下の表は、コロロのブランドコミュニケーションの内容をまとめたものになります。

 

コロロのブランドコミュニケーションの内容

コロロは2014年に販売を開始した比較的新しいブランドです。グミというカテゴリー自体もまだ生活者に定着していないことも踏まえ、食感や味よりもインパクトを重視したブランドコミュニケーションを展開してきました。 CMにおけるマンガのような設定や「果汁がオレに攻めてくる。」というややオーバーともとれる表現がそれを反映しています。

また、現在は20代~30代の女性に人気の大谷亮平さん、以前は嵐の相葉雅紀さんをCMのタレントを起用していたことから、一貫して20代~30代の女性をターゲットとしている事がわかります。

 

続いて、コロロのパッケージデザインを見てみましょう。 ここでは、同ブランドで最も売上が多い「コロロ グレープ味」をもとにご説明いたします。

コロロのパッケージの特徴は、丸みのある形状とパッケージのほぼ全体を覆う大きな果物の写真です。 丸みのあるパッケージはお店を訪れた人の目に留まりやすく、果物の写真はコロロから果物を食べているかのような食感を得られることを訴求しています。「コロロ グレープ味」ですと、パッケージにデザインされているぶどうの存在が、ぶどうを食べているような食感とジューシーさを訴求しています。 また、パッケージの左側にある「果汁100%」の表記も、ジューシーな味を訴求する役割を担っています。

以上の2点より、「UHA味覚糖 コロロ」では、CMを用いたブランドコミュニケーションを通じて商品認知を獲得し、興味を抱いた潜在顧客に対しては店頭のパッケージを通じてコロロの食感や味を伝えるという、消費者の購買決定プロセスに沿ってコミュニケーション活動を行っていることがわかります。

 

 

コロロのパッケージデザイン

「UHA味覚糖 コロロ」に関するSNSデータとブランドコミュニケーション、そしてデザインに関する評価をまとめると、認知獲得→興味を獲得→パッケージを通じて商品の特徴を訴求、という一貫性のあるコミュニケーションを行っていることがわかります。 しかし、競合ブランドからの流入や継続購入する顧客の割合が少ないことはまだブランドとして改善の余地があることを示しており、訴求方法やターゲット層の拡大など改善に向けた施策が必要と言えそうです。

 

このように顧客の声を分析し、実際のコミュニケーション、商品パッケージと照らし合わせて互いの関連性を調べることで、特定の事象の原因をより深堀していくことが可能になります。

コンセプトと顧客層の嗜好をパッケージデザインに反映することで、消費者により明確なメッセージを送ることが可能に

これまで、販売結果が現れるID-POSデータ。消費者の印象が現れるSNSデータ、パッケージデザイン分析、そしてブランドコミュニケーションの観点から「UHA味覚糖 コロロ」の勝機を検討して参りました。一方で、販売の改善に活かすためには、消費者に対してどのようなコミュニケーションをしているか、言い換えると、デザインをはじめとするマーケティング活動が重要です。

 

『Designers Eye』ではID-POSやSNSから導き出された分析結果に基づき、ブランドの認知および収益性を高めるべく、パッケージデザインやプロダクトデザインのご提案を行うことも可能です。

パッケージデザインやプロダクトデザインの提案

前回のブログの中で、「UHA味覚糖 コロロ」の主な顧客層は30代~40代の女性であることをお伝えしました。 ただ、ブランドコミュニケーション自体は、この層よりも少し下の20代~30代の女性を他^ゲットとしています。

では、今後「UHA味覚糖 コロロ」のブランドイメージを維持しつつより収益を上げるには、どのようなアプローチが考えらえるでしょうか。『Designers Eye』では、対象ブランドの戦略において、製品コンセプトと対象顧客の2軸から、各々をそのままにするのか、どちらか一方あるいは両方を変更すると仮定した上での商品デザインを提案することが可能です。こちらの3つの提案例は、SNSなどから得た顧客インサイトを基にターゲット設定とデザイン提案を行っております。

  • ①は、コンセプトと対象顧客はそのままで、果実を食べるような感覚を「食べるアロマ」として表現し、果実を口にすることで心を癒し、日頃のストレスから解放されることをイメージしています。また、このアイディアは「コロロ」と「心」の語呂合わせも含めています。
  • ②は、現状のターゲットよりやや高めの30代~40代の女性、スーパーフードをコンセプトに健康への意識が高い人に向けたパッケージ提案となります。クラフト紙のパッケージを用いてオーガニックな感じを出し、健康志向の高い人に向けて素材面からアピールしています。
  • ③は、30代男性や独身男性といった今までにない男性層をターゲットとしています。2013年に株式会社バルクが行った調査によると、30代男性のうち85%の人が週1回以上お菓子を食べることがわかりました。このことから、彼らにもお菓子へのニーズがあることがわかります。そして、30代男性の中でも特に新しいもの好きでファッション感覚を重視する人たちが持ち歩きたくなるような、シンプルでスタイリッシュなデザインにしています。

 

このように、『Designers Eye』では複眼的な視点から客観的に商品デザインを検討しご提案することで、対象ブランドの強みを維持しつつ新たな顧客層を開拓するご提案を行えます。

『Designers Eye』は他のB2C向け製品でも分析可能

これまで2回にわたり『Designers Eye』を使って、「UHA味覚糖 コロロ」がグミ市場で存在を高めていくための要素を分析してきました。『Designers Eye』は現在、飲料や菓子、トイレタリー商品、そして化粧品といった一般消費者向けに販売している製品での分析が可能です。

次回以降のブログでも、様々な業界向けの分析事例を紹介していきます。