ID-POSデータを活用して「UHA味覚糖 コロロ」の勝機を分析:前編~『Designers Eye』が可能にした複眼的視点~

グミ市場は年間100を超えるブランドが販売され、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを中心に各ブランドが熾烈な競争が行われています。そんな中、UHA味覚糖が販売する「コロロ」は、グミ市場の代表的なブランドの1つで2014年より発売されています。 True Dataの購買データ分析と、CREMUのSNS解析及びクリエイティブデザインのノウハウを組み合わせたサービス 『Designers Eye(デザイナーズ アイ)』から2回に分けて、「UHA味覚糖 コロロ」の現状分析と今後に向けたご提案を行っていきます。

販売データから見る「UHA味覚糖 コロロ」の現在地

『Designers Eye』では、国内ドラッグストア及びスーパーのID-POSデータから、ブランド毎の購入者数、購入単価、購入金額の推移を週別、月別でデータを取得することが可能です。まずドラッグストアとスーパーでの売上を対象にしたこのデータより、グミ商品市場と「UHA味覚糖 コロロ」の推移を見てみてみましょう。

グミ商品の売り上げとシェア

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

『Designers Eye』では市場全体の販売実績だけではなく、ブランド別の販売実績も調べることができます。このグラフでは、2016年11月の業界全体売上を1とし、11月の売上を基準に各月の売上を指数化しています。そして、折れ線グラフは「UHA味覚糖 コロロ」のシェアを表わしています。市場全体の特徴として、春夏のほうが秋冬に比べては売上が伸びています。 そして、対象期間の2016年11月から2017年10月までの1年間で、「UHA味覚糖 コロロ」のシェアはほぼ4~8%で推移しています。 そして、この1年間における同ブランドの平均シェアは4.8%でした。

他ブランドと「UHA味覚糖 コロロ」の購入者層は

『Designers Eye』では、販売実績データを取得できるだけではなく、性別・年代別の比率を取得することが出来ます。続いて、ID-POSデータから、購入者を性別、年代別に分析することで、どのような人たちから購入されていたかを分析致します。

グミ商品の購入者内訳

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

 

グミ商品の購入者全体を性年代別で見てみると、女性が80%以上を占めていることが分かります。 また、この傾向は全対象ブランドで共通しており、「UHA味覚糖 コロロ」においても、男女比を見るとほぼ1:5で女性からの売上が80%を越えています。

さらに、女性層に焦点を当て年代別で購入者を見てみると、グミ商品の主な購入者は40代が最も多く、つづいて30代であることがわかります。 ただ、ブランド別で見ると購入者層に若干の違いがあり、「ブランドA」では70代~80代女性からの売上比率が全体より高くなっています。

「UHA味覚糖 コロロ」は、40代女性層の購入比率はグミ全体とほぼ同じですが、30代女性からの購入率が他ブランドを下回っています。 詳細は次回にご説明しますが、30代女性をターゲットにしたブランドコミュニケーションを行っているにも関わらず、この層からのシェアが低い点は課題と考えられます。

「UHA味覚糖 コロロ」は継続顧客の育成に課題あり

では、「UHA味覚糖 コロロ」の顧客構成を、別の角度からも分析してみましょう。『Designers Eye』では、特定期間における顧客の流出入データを抽出することが可能です。そこからわかるのは、当該ブランドの顧客は、以前から同ブランドを購入している継続顧客が多いのか、新規の顧客(カテゴリーエントリー)が多いのか、または他ブランドから乗り換えた顧客(競合流入)が多いのかです。 継続顧客の割合が高ければリピーターからの支持が大きいと言えますし、新規の顧客の割合が高ければ、カテゴリー非購入者を惹きつけており今後リピーター対策が必要なブランドであると言えます。「UHA味覚糖 コロロ」と競合3ブランドの顧客構成はどのようになっているでしょうか。

ブランドへの流出入分布

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

ここでは2017年9月~10月までの2カ月間を対象期間と設定し、この期間を1カ月ずつに分け、最初の1カ月と後の1カ月の2つの期間での顧客の流入出をまとめています。 「ブランドB」を例にご説明いたしますと、以下の方法で顧客数をカウントしています。

  • 最初の1カ月で「ブランドB」を購入し、次の1カ月で再び「ブランドB」を購入→継続顧客としてカウント
  • 最初の1カ月で他のグミブランドを購入し、次の1カ月で「ブランドB」を購入→競合流入としてカウント
  • 最初の1カ月でグミ商品自体の購入がなく、次の1カ月で「ブランドB」を購入→カテゴリーエントリーとしてカウント
  • 最初の1カ月で「ブランドB」を購入したものの、次の1カ月で購入なし→カテゴリー中止としてカウント
  • 最初の1カ月で「ブランドB」を購入したものの、次の1カ月で「ブランドB」の競合グミブランドを購入→競合流出としてカウント

これら4つのブランドを比較すると、「UHA味覚糖 コロロ」の新規顧客の割合は全顧客の45%ほどで、「ブランドB」や「ブランドC」と比べるとやや低くなっています。 新規顧客の内訳を見てみると、「UHA味覚糖 コロロ」はカテゴリーエントリーの顧客数はこれらのブランドとあまり差がないものの、競合流入の割合が「ブランドB」と「ブランドC」と比べると低く、他ブランドの顧客をコロロに取り込めていないことがわかります。

一方、「UHA味覚糖 コロロ」の継続顧客の割合は全顧客の6%ほどで、対象4ブランドの中では最も低い結果となっています。 今後はブランド力を高め、同ブランドを継続的に購入してくれるファンを作るための施策が顧客の維持には不可欠と考えられます。

このデータから、「UHA味覚糖 コロロ」は、ブランド全体の売上額とシェアに関しては順調に推移しているものの、顧客という点では新規顧客獲得と顧客継続ともに課題を残していると言えます。

結果だけではない、因果関係も分析できる『Designers Eye』

これまで、売上の実態を如実に表わすID-POSデータを分析することで、グミ市場における「UHA味覚糖 コロロ」ブランドの現状を分析して来ました。しかしながら企業のマーケティングに役立てるには、結果である販売実績だけではなく、どんな打ち手が販売実績に結びついているかという因果関係を明らかにすることが重要です。

『Designers Eye』では、ID-POSデータの分析だけではない、SNSデータの分析とデザインの定性・定量評価を併せて行うことで、従来は主観的な評価に偏りがちであったデザイン評価、顧客の声を定量かつ統計的観点から分析することを可能にしました。次回は、「UHA味覚糖 コロロ」が購入者にどのように認知されているのか、どのようなメッセージを与えているのか、そして今後収益を更に伸ばすため考えられる施策についてご紹介していきます。