「DHC 薬用リップクリーム」の成功要因をID-POSデータから分析:前編~『Designers Eye』が可能にした複眼的視点~

リップクリーム市場は、現在100以上のブランドがドラッグストアやスーパーマーケットなどで熾烈な競争を行っています。そんな中、DHC社が販売する「薬用リップクリーム」の販売が好調です。 True Dataの購買データ分析と、CREMUのSNS解析及びクリエイティブデザインのノウハウを組み合わせたサービス 『Designers Eye(デザイナーズ アイ)』から2回に分けて、「DHC 薬用リップクリーム」の成功要因を分析していきます。

販売データから見る「DHC 薬用リップクリーム」の成功

『Designers Eye』では、国内ドラッグストア及びスーパーのID-POSデータから、ブランド毎の購入者数、購入単価、購入金額の推移を取得することが可能です。まず、リップクリーム市場全体と「DHC 薬用リップクリーム」の売上推移を見てみましょう。

リップクリーム各月売上

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

このグラフでは、2016年10月の業界全体売上を1とし、10月の売上を基準に各月の売上を指数化しています。まず、リップクリーム市場全体では、10月~1月にかけて売上が伸び、2月以降は売上が収縮する特徴があります。 そして、「DHC薬用リップクリーム」は、2017年8月にシェアを大きく伸ばし、その後も12%~14%のシェアを確保していることがわかります。この結果、今回の調査対象期間(2016年11月~2017年10月)での「DHC薬用リップクリーム」の売上は、前年同期間比119%と大幅増を達成しました。

他ブランドと「DHC 薬用リップクリーム」の購入者層の違い

ここで、『Designers Eye』を用いて、ID-POSデータから購入者の性年代を分析したいと思います。

リップクリームの購入者内訳

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

リップクリームの購入者を性年代別で見ると、ほぼ男性:女性=1:9であること、そして市場全体と「DHC 薬用リップクリーム」を比較すると、DHCはより女性比率が高いことがわかります。

さらに年代別で見ると、リップクリームの主な購入者は30代と40代であり、この傾向は主要4ブランドで共通しています。 ただ、DHCは、10代~20代の若年層購入者の割合が高い点が他ブランドと異なります。 同ブランドが若年層から支持を得た理由に関しては、次回ご説明したいと思います。

「DHC 薬用リップクリーム」は顧客獲得・顧客維持ともに順調

『Designers Eye』では、特定期間における顧客の流出入データの分析が可能です。そこからわかるのは、当該ブランドの顧客は、継続顧客が多いのか、新規の顧客が多いのか、または他ブランドから乗り換えた顧客が多いのかです。「DHC 薬用リップクリーム」と競合3ブランドの顧客構成を分析してみましょう。

ブランドへの流出入分析

出典:国内ドラッグストア及びスーパー各社ID-POSデータより集計 (True Data社)より

 

ここでは対象期間を1年間とし、1年間を6カ月ずつに分け、最初の6カ月と次の6カ月の2つの期間での顧客の流入出をまとめています。 「ブランドA」を例に説明しますと、

  1. 最初の6カ月「ブランドA」、次の6カ月で再び「ブランドA」⇒継続顧客
  2. 最初の6カ月「他ブランド」、次の6カ月「ブランドA」⇒競合流入
  3. 最初の6カ月「購入なし」、次の6カ月「ブランドA」⇒カテゴリーエントリー
  4. 最初の6カ月「ブランドA」、次の6カ月「他ブランド」⇒競合流出
  5. 最初の6カ月「ブランドA」、次の6カ月「購入なし」⇒中止顧客

の5通りで各々該当する顧客数を数えます。

4ブランドを比較すると、DHCと「ブランドA」の新規顧客の割合は全顧客の40%ほどで他の2ブランドより高く、継続顧客の割合も10%ほどで他の2ブランドよりも高いことから、DHCはより顧客が定着していると言えます。

従って、「DHC 薬用リップクリーム」は新規顧客獲得と継続顧客維持の実現が売上上昇につながったと考えられます。

結果だけではない、因果関係も分析できる『Designers Eye』

これまで、ID-POSデータの分析からリップクリーム市場における「DHC 薬用リップクリーム」の成功要因を分析して来ました。しかしながら、企業のマーケティングに役立てるには、販売実績と共にどの打ち手が販売実績に結びついたかという因果関係を明確にすることが重要です。

『Designers Eye』では、ID-POSデータの分析に加え、SNSデータとパッケージデザインの分析も行うことで、主観的に偏りがちであったデザイン評価や顧客の声を定量的に統計的観点から分析することを可能にしました。次回は、「DHC 薬用リップクリーム」購入者への認知獲得具合、顧客へのメッセージ、そして購入者のDHCブランド認知と売上への影響についてご紹介していきます。